抄録
【目的】 呼吸機能評価として、横隔膜移動距離の測定方法には超音波(以下、US)を使う2つの方法がある。1つは、Wellingtonらの直接的に右横隔膜の移動距離を測定する方法(以下、RD法)。もう1つは、Nairらの肝臓門脈左枝の移動距離から間接的に測定する方法(以下、PV法)である。しかし、これらの方法の比較や測定姿勢の違いによる再現性の報告は目下のところ無く、呼吸援助が様々な姿勢で行われる事を考えると検証が必要と考える。そこで今回我々は、2つの測定方法を複数の姿勢で比較検討し、方法と測定姿勢における再現性を明らかにする事を目的とした。
【方法】 対象者は健常成人男性5名(27.4±4.5歳)。RD法ではM-modeを、PV法ではB-modeを用いて安静呼吸で測定した。測定姿勢は背臥位、右側臥位、左側臥位、端坐位で、測定開始前の約20秒の安静呼吸に続いた5呼吸の平均値を基礎データとした。測定は、同一検査者が同じ各測定方法で、全姿勢での測定を約14日の間隔を設け、計3回実施した。再現性の評価には級内相関係数(以下、ICC)を用いた。
【結果】 RD法・PV法の順で各方法の再現性を姿勢別にICC(1, 3)で示すと、背臥位0.75・0.54、左側臥位0.76・0.75、右側臥位0.83・0.87、端坐位0.92・0.95となった。RD法・PV法間の再現性を姿勢別に1回・2回・3回(平均)を順にICC(1, 1)で示すと、背臥位0.97・0.76・0.98(0.90)、左側臥位0.44・0.61・0.97(0.67)、右側臥位0.82・0.66・0.97(0.82)、端座位0.81・0.79・0.85(0.82)となった。
【考察】 RD法・PV法の各姿勢での再現性は、端座位・右側臥位は3回の測定の値と桑原の判定基準を参照すると「良好」から「優秀」となり、再現性が高く、測定回数は3回で十分な評価が可能と考える。左側臥位・背臥位の値は「要再考」から「普通」となり再現性がやや低く、これらの姿勢での評価は3回以上の測定が無難であると考える。姿勢により異なる再現性となった理由として、横隔膜と肝臓及び腹腔内臓器(以下、IAO)が受ける重力の影響が各姿位によって異なる為と考えられる。RD法・PV法間の各姿勢での再現性は、3回の測定の再現性の平均において背臥位・右側臥位・端座位で高く、「良好」から「優秀」と判定された。一方、左側臥位では「可能」と判定されたものの、比較的低い値となった。これらの事より、背臥位・右側臥位・端座位ではどちらの方法も測定は可能と考えられる。しかし、左側臥位では測定方法を統一する必要があると考えられた。
【まとめ】 端座位と右側臥位ではいずれの方法であっても3回程度測定した平均値を採用できる。背臥位は2つの方法間の再現性は良いが、他の姿勢に比べると不安定であり3回以上測定した方が無難である。左側臥位はいずれの再現性も良くはないので3回以上測定をする必要がある。