Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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オリゴ糖エリシターおよびその受容体を介した植物生体防御機構の調節
Takeshi YamaguchiYuki ItoNaoto Shibuya
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2000 年 12 巻 64 号 p. 113-120

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抄録
糸状菌細胞壁の構成成分であるキチンのオリゴ糖の特定サイズのものはイネの培養細胞に対して強いエリシター活性を示すだけではなく、単子葉植物を中心に広い範囲の植物でエリシターとして認識されることが示唆されている。筆者らは最近、イモチ病菌細胞壁グルカンの酵素分解物からイネ培養細胞に対して強いエリシター活性を示す1種のグルコペンタオースを精製し、その構造を明らかにした。その結果、イネとダイズは異なる構造のグルカン断片をエリシターとして認識していることが示唆された。植物病原菌の感染に対する防御反応の多くが、エリシター処理によっても再現できることから、防御関連遺伝子発現に至るシグナル伝達過程を解析する優れたモデル系として、多くの研究が行われている。エリシターシグナルの受容と伝達に関与する受容体分子を同定し、その性質を調べることはシグナル伝達機構を解明する上できわめて重要である。筆者らはこれまでに、キチンオリゴ糖エリシターの受容体候補として、イネ培養細胞原形質膜上に存在する75kDaのエリシター結合タンパク質を同定しこれを精製した。このタンパク質およびβ-グルカンエリシター結合タンパク質の構造と性質を調べることにより、これらのオリゴ糖エリシターがイネやその他の植物でどのように認識・伝達されていくか、また、こうした認識・応答系がどのように進化してきたかなどについての知見が得られるものと期待される。
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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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