時間学研究
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炎上現象の時系列解析における精度向上を目的とした人間の印象評価に基づく極性辞書の提案
加藤 三四郎小山 恵美川北 眞史
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2019 年 10 巻 p. 19-37

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抄録

自己発信可能なメディアの普及に伴い、炎上現象も増加している。前報では、インターネット掲示板(以下、掲示板)における炎上現象の時系列定量評価手法を提案し、投稿数の時系列変動を評価する単位として、物理的時間よりもスレッドを用いる方が効果的であることも明らかにした。ただ、この手法だけでは、投稿数の急増が、炎上であるか、議論の活発化であるか判別できないなどの課題が残った。この課題を解決するには、投稿内容を質的に評価する必要がある。この質的な評価には、極性辞書に基づく、PN(ポジティブ/ネガティブ)判定が有効とされる。しかし、既存辞書の多くは口語的表現に対応せず、それらが多用される掲示板上の分析には不向きである。そこで本研究では、炎上現象の時系列解析の精度向上をめざし、投稿内容の評価に適した極性辞書を作成する。 本研究では、口語表現などへの対応を念頭に、評価者20名の8775語に対する極性評価を基に辞書を作成した。この辞書を評価するため、炎上事例を対象に前報で炎上の量的評価指標として導入した炎上値を算出し、既存辞書と本辞書それぞれを基にPN判定により求めたPN値との相関係数を比較した。炎上のピークを平準化するため、20スレッド移動平均による炎上値とでは、本辞書で強い有意な負の相関がみられた一方、既存辞書では弱い有意な負の相関にとどまった。本辞書を用いることで炎上現象をより精確に分析できる可能性が示された。

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© 2019 日本時間学会
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