時間学研究
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古記録に記載された青森県岩木山の初冠雪日の特徴と気候復元への適用の可能性の検討
青野 靖之藤井 秀太
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2024 年 15 巻 p. 47-60

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抄録
 青森県にある岩木山の初冠雪日の記録について,秋季の気温復元への適用の可能性について検討した。1860年代までについては,弘前藩庁日記などの史料調査から179年分の初冠雪に関するデータを収集した。初冠雪日は観望場所により左右されることから,近現代についても弘前市で観望されたデータを選択し,気温との関係をキャリブレートした。秋田における高層気象観測値との関係を分析したところ,岩木山の標高とほぼ同じ高さにあたる850 hPaに対応する高度の10月平均気温と初冠雪日との間で高い相関が得られた。太陽活動の弱い近世の気温復元を目標にしたことから,太陽活動の相対的に弱い年における気温と初冠雪日との関係を求めることにした。その結果,黒点相対数190 (または黒点群数9)未満に解析対象を絞った場合に,最も相関が高くなることがわかった。移動中央値を用いた平滑化により復元誤差はRMSEで1℃以下におさまった。得られた復元結果は,17~19世紀における2つの太陽活動の極小期で近現代よりも気温が1℃程度低いことを示した。気温復元に適した独立峰の条件の見極め方,太陽周期が気温-初冠雪日間の関係に及ぼす影響の評価など,本研究が今後に残した課題は多い。
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© 2024 日本時間学会
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