2021 年 26 巻 10 号 p. 10_44-10_50
抗体は、ウイルスに対する免疫応答において主要な役割を果たす物質の一つであり、標的となるウイルス抗原に結合することで感染を阻害する。人工的に免疫応答を惹起するワクチン接種によっても抗体が誘導され、その後にウイルスが侵入してきた際に生体を守る。抗体検査は、感染履歴に関する調査やワクチンの有効性評価等における役割が期待されている一方、免疫応答により誘導される抗体には多様性があり経時的にも変化していくことから、検査結果の解釈には注意が必要である。本稿では、抗体に関する基礎的な事項、抗体検査の分類と特徴、抗体検査に関して留意すべき事項について概説し、国立医薬品食品衛生研究所が実施した抗体検査キットの一斉性能評価試験の結果も踏まえて、抗体検査に関する今後の課題について考察する。なお、新型コロナウイルス抗体検査は、現時点では研究目的で行われているものであり、何等かの診断に用いられるものではない点にご留意いただきたい。