体育科教育は、身体が焦点化される教育実践ゆえにジェンダーの政治に組み込まれてきた歴史を持つ。男女で異なる単位数や内容が解消されたのは1989年の学習指導要領改訂であり、その後も実践レベルでは男女で異なるカリキュラムが残っている。近年では、スポーツの産業化やスポーツイベントを介した経済政策などが、教育にも少なからず影響を及ぼしている。学校体育では、疑われることなく競技スポーツが主流化されているが、競技スポーツは、男性優位を際立たせ、女性を周縁化する作用を持つ。女性アスリートの活躍とは裏腹に、指導的立場にある女性割合は低く、教育の場における女性のロールモデルも十分ではない。学校期では女性のスポーツ離れが進み、生涯にわたる運動・スポーツ実践においても大半の女性たちが競技スポーツを自分のいる場所とは見ていないにもかかわらず、競技スポーツの主流化が進み、財源も圧倒的に競技スポーツに割り振られている。