学術の動向
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コロナ禍とどう向き合うか ―公衆衛生上の危機と私たちの社会―
コロナ禍の公衆衛生
──既視感と新しさと
重田 園江
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2022 年 27 巻 3 号 p. 3_12-3_17

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抄録

 新型コロナウイルスのパンデミックは、人間の捉え方に二面があることを明らかにした。一つは生物種としてのヒトで、もう一つは社会的・政治的・関係的な世界に生きる人間である。この二つの軋轢としてコロナ禍で生じた社会的争点を理解することができる。

 この新しい感染症は、一方で歴史的な既視感をもたらす。疫病の鎮静化と経済活動との両立の困難、個人の自由と行動制限との対立、反ワクチン派の動向など、これまでの伝染病でも同じようなことが起きた。

 他方で新たな特徴もある。一つはワクチン開発における巨大製薬企業の役割であり、これは21世紀のグローバル資本主義のあり方を見事になぞっている。また、今回のパンデミックはグローバル資本主義そのものの問題の露呈で、また別の感染症が蔓延する可能性が高い。人間が地球環境と自然の一部であること、そして強者だけが肥え太る現状を理解するなら、経済活動をいまのままつづけることには首肯しがたい。

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