東北森林科学会誌
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植栽したワラビによる下刈り低減効果と造林収支の改善
渡部 公一 中村 人史
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2019 年 24 巻 1 号 p. 13-16

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抄録
スギ再造林地にワラビをカバークロップとして植栽することによって下刈り期間をどれくらい短縮できるかを明ら かにするとともに,再造林から初期保育期までの経費と収入を試算した。山形県内に3箇所の試験地を設け,ワラビの植被率とスギとの競合状態を4成長期終了時まで調査した。ワラビの被覆力に関しては,ワラビをha当り2,000〜 3,000本植栽すると約1年半後には林地全体に拡がり,2年後には完全に他の植生を抑えて再造林地を被覆した。ワラ ビが優占した後は他の雑草木の再生はほとんどなく高い植被率を維持した。植栽当年はワラビがスギまで面的に拡がら ないため下刈りは不要であるが,植栽2年目はスギよりもワラビの方が高くなるため,下刈りが必要であった。植栽3年目は場所によっては必要で,植栽4年目には完全にスギの樹高がワラビよりも高くなり,その後の下刈りは不要になっ た。主伐後,雑草木の再生が少ないうちに植栽することが前提になるが,20%程度の被圧木の発生を許容するとすれば,下刈りは1回から2回に減らせることが実証された。また,ワラビを導入して林齢3〜8年生までワラビを収穫し,出荷したとすると,林齢8年生時点では造林・保育経費を賄ったうえ,約11万円の黒字になると試算され,大幅な造林収支の改善が見込まれた。
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© 2019 東北森林科学会
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