東北森林科学会誌
Online ISSN : 2424-1385
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24 巻, 1 号
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報文
  • 野村 祐紀
    原稿種別: 報文
    2019 年 24 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はマツ材線虫病被害木探査におけるドローンによる調査の有効性を,踏査との比較の中で,精度と労力の観点から検証・考察することである。秋田県能代市後谷地国有林内のクロマツ林とクロマツ・広葉樹混交林において, 踏査とドローン調査で枯損木を探索し,調査に要した労力を人×時間で比較した。ドローン調査では空撮を行い,空撮 画像から枯損木の位置を特定し,その結果をもとに現地調査を行った。その結果,ドローン調査では踏査で見つかった 木の22〜44 %を確認することができ,見つけられなかった木の多くは下層木であった。ドローン調査でかかった労力は2.38〜2.87人・時間で,踏査での8.50〜12.70人・時間に対し22.6〜28 %の省力化が図られた。ドローン調査により上層の被害木は着実に検出することが可能であり,また作業の省力化を実現できる。ただし,下層木を見落とすリ スクが許容されない場合には下層木を探査する踏査を併用すべきである。
  • ―岩手県盛岡市における施工40年後の事例―
    泉 桂子, 山内 勇人
    原稿種別: 報文
    2019 年 24 巻 1 号 p. 5-12
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー
    広葉樹二次林に施工された切土法面における樹木の自然侵入の状況とその種子散布様式を明らかにした。調査法面は1976 年に施工され,斜面上部に自然地形を残し,その下部に1〜3条の犬走りを持つ切土法面が造成された。面積は切土法面0.160 ha,その上部の地形残存部0.129 ha で,標高177〜195 m,傾斜33〜41度,斜面は北北東向きである。調査地は草本の種子吹付工が施され,以後の管理は2017年6月に低木・支障木の伐採が行われたのみである。調査対象は胸高直径5 cm以上の木本とし,樹種・胸高直径・樹高を計測した。切土法面に侵入した樹木は16種であ り,うち被食散布7種,風散布4種,貯食散布5種であった。切土法面のhaあたり樹幹数は1,113幹/ha,832個体/ha,幹材積は126.148 m³/haであった。ミズキとスギは切土法面上における幹数の76 %を占め,法面施工後早期に侵入したと考えられる。
  • 渡部 公一, 中村 人史
    原稿種別: 報文
    2019 年 24 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー
    スギ再造林地にワラビをカバークロップとして植栽することによって下刈り期間をどれくらい短縮できるかを明ら かにするとともに,再造林から初期保育期までの経費と収入を試算した。山形県内に3箇所の試験地を設け,ワラビの植被率とスギとの競合状態を4成長期終了時まで調査した。ワラビの被覆力に関しては,ワラビをha当り2,000〜 3,000本植栽すると約1年半後には林地全体に拡がり,2年後には完全に他の植生を抑えて再造林地を被覆した。ワラ ビが優占した後は他の雑草木の再生はほとんどなく高い植被率を維持した。植栽当年はワラビがスギまで面的に拡がら ないため下刈りは不要であるが,植栽2年目はスギよりもワラビの方が高くなるため,下刈りが必要であった。植栽3年目は場所によっては必要で,植栽4年目には完全にスギの樹高がワラビよりも高くなり,その後の下刈りは不要になっ た。主伐後,雑草木の再生が少ないうちに植栽することが前提になるが,20%程度の被圧木の発生を許容するとすれば,下刈りは1回から2回に減らせることが実証された。また,ワラビを導入して林齢3〜8年生までワラビを収穫し,出荷したとすると,林齢8年生時点では造林・保育経費を賄ったうえ,約11万円の黒字になると試算され,大幅な造林収支の改善が見込まれた。
特集「次世代の森林整備をどう進めるか―再造林の選択肢―」
記録
報文
  • ―低密度植栽と下刈り作業を中心に―
    駒木 貴彰, 梶本 卓也, 八木橋 勉
    原稿種別: 報文
    2019 年 24 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー
    主伐後の民有林の再造林は,東北地方では各県ともほぼ20~30 %の低調な実施面積率となっており,再造林コス トが高いことが大きな原因となっている。そこで,再造林コスト削減の方策として植栽密度を下げるとともに下刈り作 業を省略して,植栽と下刈り作業のコストを低減させる技術開発が行われている。全国各地の再造林コスト削減の取組を見ると,1,000~2,000本/haの低密度植栽の実施と,低密度植栽に全刈りだけでなく坪刈りや高刈り等の下刈りを 組み合わせることで作業の効率化とコスト削減を目指す取組が行われており,従来の方法よりもコストを低減させるこ とに成功している事例も増えている。また,大苗の低密度植栽も下刈りの省力には有効である。今後の課題としては,低密度植栽による除伐費用の増加がないのかを明らかにすること,大苗の生産体制の整備や価格の低下があげられる。
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