日本冷凍空調学会論文集
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原著論文
電気自動車が京阪神地域の光化学汚染と気温に及ぼす影響の評価
安田 龍介小澤 卓也吉田 篤正
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2015 年 32 巻 3 号 p. 293-307

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抄録

2010 年夏季の大阪平野を中心とした約100 km 四方の領域を対象に,電気自動車の普及が光化学汚染と気温に与える影響について,数値モデルを用いた評価を行った.現行の全ての乗用車と軽自動車が内燃機関自動車から電気自動車に置き換わる場合(EV 化)を想定し,汚染物質と顕熱の排出量変化を既存の排出インベントリーを元にトップダウン的に推計した.電気自動車に対する追加電力需要は地域電力会社の発電所から供給されると仮定し,原子力発電所(Nuclear Power Plant, NPP)が稼働している場合と全停止している場合について調べた. オゾン汚染レベルと熱環境に対するEV 化の影響をそれぞれ閾値超過積算値によって評価した.NPP が稼働している場合,EV 化によりNOx, NMVOC, CO2 の排出量はいずれも減少し,地域内の汚染レベルは低下する.低下量は領域北側と東側で大きい.この傾向は海風経路と光化学レジームに関係している.地表近くの暑熱環境に対する緩和効果は非常に小さい. NPP が停止し火力発電により不足電力を代替する場合,NOx の地域排出量は大幅に増加し,NPP 稼働時に比べ汚染レベルは微増する.また,EV 化によりCO2 排出量は増加するものの,汚染レベルは現況ケースより低下する.

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© 2015 公益社団法人 日本冷凍空調学会
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