日本冷凍空調学会論文集
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原著論文
並列多穴微細流路を用いた蒸発熱交換器内の流動様相観察と偏流メカニズムの解明および対策
大野 正晴榎木 光治冠者 慧祐中村 太一大川 富雄西田 耕作加藤 雅士
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2017 年 34 巻 4 号 p. 413-

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抄録

本研究では,微細流路を用いたプレート熱交換器の偏流メカニズムを実験的研究から明らかにして,その対策法について提案している.まず,蒸発熱交換器内の可視化実験では,流路1 本の水力直径が 0.93 mm の並列に接続された複数本の微細流路(並列多穴微細流路)内を流れるHFE-7000 の気液二相垂直上昇流の流動様相観察を,高速度カメラを用いて行った.微細流路部は背面からヒーターを埋め込んだ銅板によって加熱して観察を行った.飽和温度は30 °C である.流動様相の変化に対する入口ヘッダー部の気液分布の影響を調査するため,質量流量がW = 0.0022 kgs-1 のもと,出口クオリティをxout = 0.9 に保ち,入口クオリティをxin = 00.20.7 に変化させて観察した.その結果,偏流は試験部入口ヘッダー部に気液分布の偏りが生じることで引き起こされることが確認された.そして,熱交換器性能を低下させると考えられる逆流も同様に観察され,この原因は気体プラグが加熱によって急拡大することで生じていることが確かめられた.これら実験から得た知見により,入口ヘッダー部を,流動様式線図を基に設計し直して,試験部入口から離れるほど流路面積が小さくなる形状にしたところ,偏流及び逆流が抑制されていることを高速度カメラによる撮影から確認した.このため,赤外線カメラを用いて熱交換器の温度計測を実施し,定量的に偏流と逆流の抑制による効果を確認した.この結果,入口ヘッダー部に気液の偏りがあると,試験部入口付近の流路の下流側ではドライアウトによる温度上昇が恒常的に生じているのに対して,試験部入口ヘッダー部を改良することで,偏流による下流側のドライアウトは抑制され,かつ温度分布が均一になっていることを確認し,偏流対策の有効性を実証した.

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© 2017 公益社団法人 日本冷凍空調学会
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