スクロール圧縮機では,固定と旋回の羽根間の狭い隙間に比較的高い油膜圧力が発生していることが予想されるが,その発生メカニズムや特性は明らかにされていない.本報では第一に,スクロール羽根間の運動が転がりと滑りの重ね合わせで表されることを明らかにしている.第二に,曲率半径の大きなスクロールに対して曲率半径の小さなスクロールが内接転がり・滑り運動する場合について,発生する油膜圧力をオイルの粘性効果だけを考慮して理論解析する手法を示し,油膜圧力と油膜力を比較的簡単な無次元式で導いている.第三に,スクロール接点が相対的に内接転がり・滑り運動をする簡単な等価円弧モデルを用いて,発生する高い油膜圧力を実験的に計測し,理論解析の結果が実験の結果に良く一致することを示している.最後に,中容量スクロール圧縮機において発生すると予測される油膜圧力と油膜力を理論計算し,特に外周部では羽根の弾性変形を引き起こすほどの大きな油膜力が発生することを明らかにしている.