本研究は,小規模工場や家庭などから排出される低位熱エネルギーを有効利用する新たな多段型潜熱蓄熱式熱交換システム向けに新蓄熱物質を探索し,常温域に相変化特性を有するカプリン酸,ラウリン酸,ミリスチン酸の相互混合脂肪酸の液相状態における熱物性を計測・評価したものである.これらの物質は,過冷却が小さくて扱い易く,人体に影響が少ない潜熱蓄熱物質でもある.ここでは著者らが既に報告(Inagaki et al. 2019)した熱物性値(密度・粘度・融点・凝固点・過冷却度)を参照しながら,未だ同定されていない比熱・熱伝導率とその温度依存性に関する計測と評価を進めた.その結果,液相状態下の混合脂肪酸の比熱や熱伝導率に関する熱物性値を新たに提示するとともに,実使用形態に合わせた熱輸送プロセスに必要不可欠な伝熱データベースの充実を図った.