エミュレーター式負荷試験法は,試験装置における熱容量などの違いを補償するために,装置内の温湿度状態をエミュレーターによって仮想的に与えることで機器の動的性能を試験装置の違いによらず高精度に再現性ある形で評価しようとするものである. 一連する本研究では,これまでにエミュレーター式負荷試験法を提案するとともに,ラウンドロビン試験により,ある程度の精度で性能が得られることを明らかにしてきた.しかし,これまでの研究では,動的試験の再現性を向上させる具体的な方策については未解決の課題となっていた. そこで,エミュレーターからの室内温湿度の制御目標値と試験装置においてこの制御目標値に基づいて条件発生器で実際に生成される室内空気の温湿度の遅延特性を線形モデルで表現し,これに基づく新たなフィードフォワード補償技術を提案する. 提案された手法により,さまざまな試験条件において,室内温湿度はルームエミュレーターからの制御目標値に対し60秒以内の追従性を実現し,異なる試験装置であっても動的試験における空調機の性能の偏差を2%以内に抑えることが可能であることを確認した.