2021 年 13 巻 1 号 p. 11-17
土壌や水等の放射能定量において,許容される精度の範囲内で簡易に実施できる方法が求められている.提案されている手法を多様な条件で検証するためには,シミュレーションが有効である.簡易に実施できる絶対測定法に従来サムピーク法と簡略化サムピーク法が提案されている.しかし,両手法は,これまでに,点線源試料で検証されているが,体積線源試料の場合には放射能を過小定量することが報告されている.過小定量の要因には,測定対象の核種から放出される2本のγ線の角相関,幾何学的効果,そして試料内におけるγ線の自己吸収が挙げられる.それらの影響の度合は線源検出器間距離(SDD)に依存するが,系統的な測定による評価は難しい.本研究では,Geant4モンテカルロ法を用いて測定系を模擬したシミュレーション体系を構築して過小定量の要因とSDDとの関係を調査した.その結果,50 mm厚の体積線源では,SDDが10 cm以下では角相関ならびに幾何学的効果による影響が大きく,SDDが10 cm以上の測定を行ったうえで定量値を評価する必要があることが示された.また,SDDが10 cm以上では,試料内の自己吸収に起因する放射能の過小定量が主要因であり,その量は一定であることが示された.