日本シミュレーション学会論文誌
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論文
最大原理に基づいたSIRモデルにおける最適制御に関する一考察
中川 匡弘
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2022 年 14 巻 2 号 p. 85-95

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抄録

本論文では,感染症の簡便な数理モデルの一つであるSIRモデルにおいて,実質的な感染率に関係する実効再生産数を時間制御することにより,総感染者数抑制と経済損失低減の両立を可能とする最適化手法を提案する.具体的には,Pontryaginの最大原理に基づいて,感染抑制と抑制による経済損失の両方を考慮した目的関数と随伴変数並びにHamilton関数を導入し,正準方程式を解くことにより最適制御を実現する.本シミュレーションの結果,感染抑制期間を固定し,経済損失を考慮しない場合には,先行研究で報告されたものと同様の結果が得られ,また,感染抑制期間を固定しないで感染抑制と経済損失の両方を考慮した場合には,目的関数における経済損失の割合をより大きくすることにつれて,最適化された人流抑制制御の期間がより短縮されることが確認された.さらに,経済損失が同程度であれば,感染抑制率も同程度であることが見出された.

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© 2022 日本シミュレーション学会
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