Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene
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ファンシダールによるマラリア感染治療後のマウス血液酸素親和性の変動
日置 敦巳大友 弘士
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1987 年 15 巻 1 号 p. 17-23

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抄録
抗マラリア薬ファンシダール投与後の, マラリア感染マウスにおける血液酸素親和性の変動について調べた。5週齢, 雄のddYマウスにPlasmodium berghei NK65感染赤血球107個を腹腔内接種し, その5日後にファンシダール (スルファドキシン20mg/kg体重, ピリメサミン1mg/kg体重) を経口投与したところ, 33%のマウスは治療の1~2日後に死亡したが67%のマウスはファンシダール投与後7日以上生存した。これらのマウスでは治療によりparasitemiaは低下し, 低血糖, 続いて高乳酸血症も徐々に回復した。しかし, 血液中の総ヘモグロビン濃度は治療2日後に低下し, ヘモグロビン中に占めるメトヘモグロビンの割合は逆に増加した。血液の酸素親和性は治療翌日には低下を示したが, 2日後および3日後には著しく上昇した。この上昇は, 主として血液pHの回復に起因するものと考えられた。酸素運搬に有効な血液中のヘモグロビン濃度と酸素親和性の変動から推察すると, 治療後, 特にファンシダール投与2日後の血液酸素供給能はかなり低下しているものと考えられた。
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