Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene
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15 巻, 1 号
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  • II 東海地方の揖斐川, 長良川, 木曽川流域産カイならびにネズミにおける本種の検出成績
    松尾 喜久男, 真喜屋 清
    1987 年 15 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1987/03/15
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    1983年10月から1985年10月の間に, 伊勢湾に注ぐ三重, 愛知県下の揖斐川, 長良川, 木曽川の河口周辺に生息するカイ, ネズミについて大平肺吸虫の検出を行った。計5地点で採集したムシヤドリカワザンショウ計5,305個体を剖検し, そのうち, 揖斐川, 木曽川の各1地点から本種セルカリアを検出した。この2地点における検出率はそれぞれ, 0.45%, 0.48%であった。ネズミについては, 3河川流域からドブネズミ計18頭, アカネズミ計6頭を捕獲して剖検した。ドブネズミでは8頭の成熟ネズミの肺から本種成虫計90個体, 1頭の未成熟ネズミの肝から未熟虫体1個体を検出したが, アカネズミはすべて陰性であった。既報のカニの成績ならびに今回のカイ, ネズミの調査結果から, 3河川河口流域の広大な大平肺吸虫分布地において, 本種の生活史に第1中間宿主としてムシヤドリカワザンショウ, 第2中間宿主としてクロベンケイ, ベンケイガニ, 終宿主としてドブネズミが関与していることが初めて明らかになった。
  • 橋口 義久, EDUARDO A. GOMEZ LANDIRES, VICENTA VERA DE CORONEL, 三森 龍之, 川端 真 ...
    1987 年 15 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 1987/03/15
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    エクアドル国のアンデス斜面低地から高地 (海抜300m-1,500m) にかけて居住する住民について, リーシュマニア症の罹患状況を調べた。この流行地には約15年前にハイウェイ (道幅約10m) が建設され, 住民の居住環境ならびに生活様式に大きな変化が認められた。
    一般住民446名について検査したところ, 64名 (14.3%) は本症によると考えられる治癒病変, または皮膚潰瘍を保有していた。
    居住地の高度差による住民のリーシュマニア症罹患状況を知るため, 被検者のうち5-15歳の学童224名を対象に, 4地点 (A, 海抜500m;B, 1,000m;C, 1,300m;D, 1,500m) において, 居住地区別の罹患を比較した。その結果, 学童のリーシュマニア症罹患率は, 海抜500m地点で17真4%, 1,000mで18.8%, 1,300mで5.6%, 1,500mで8真8%となり, 500m-1,000mの地域と1,300m-1,500mの地域との間には, 統計学的に有意の差を認めた (0.01<p<0.05, χ2=5.314)。このことは, アンデス斜面のリーシュマニア症流行地の比較的低い地域 (1,000m以下) では, 本症の罹患率が高くなるが, より高い地域では罹患率は低くなることを示唆している。
    一方, ハイウェイ沿いと山間部との間で, 本症罹患率の差異を検討するため, 上記224名の学童を, その居住地の状況によって次の2群に分類した。1) 山間部に定住または過去に一時期居住した者, 2) ハイウェイ沿いで出生または非流行地から移住した者。上記2群間での学童の罹患率を見る上で, 高度差による影響を除去するため, 各地区ごとの山間部住民とハイウェイ住民との比較を行った。その結果, 4地点のいずれにおいても両群問に有意な差を認めなかった。したがって, 本調査地においては, ハイウェイが建設され, 環境変化や住民の移動がみられたものの, 道路沿いの原生林や人家, および農耕地周辺に原生林の一部が残存し, これがサシチョウバエや保虫宿主の供給源の役割を果たしているものと判断された。
  • 日置 敦巳, 大友 弘士
    1987 年 15 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 1987/03/15
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    抗マラリア薬ファンシダール投与後の, マラリア感染マウスにおける血液酸素親和性の変動について調べた。5週齢, 雄のddYマウスにPlasmodium berghei NK65感染赤血球107個を腹腔内接種し, その5日後にファンシダール (スルファドキシン20mg/kg体重, ピリメサミン1mg/kg体重) を経口投与したところ, 33%のマウスは治療の1~2日後に死亡したが67%のマウスはファンシダール投与後7日以上生存した。これらのマウスでは治療によりparasitemiaは低下し, 低血糖, 続いて高乳酸血症も徐々に回復した。しかし, 血液中の総ヘモグロビン濃度は治療2日後に低下し, ヘモグロビン中に占めるメトヘモグロビンの割合は逆に増加した。血液の酸素親和性は治療翌日には低下を示したが, 2日後および3日後には著しく上昇した。この上昇は, 主として血液pHの回復に起因するものと考えられた。酸素運搬に有効な血液中のヘモグロビン濃度と酸素親和性の変動から推察すると, 治療後, 特にファンシダール投与2日後の血液酸素供給能はかなり低下しているものと考えられた。
  • 千馬 正敬, 中村 剛, 板倉 英世
    1987 年 15 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 1987/03/15
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    1964-1973年と1974-1983年の各年代におけるB型肝炎表層抗原の陽性率を急性肝炎, 慢性肝炎, 肝硬変, 肝硬変に伴った肝細胞癌および肝細胞癌の組織を長崎大学病院の剖検肝臓422例を使用して検索した。B型肝炎表層抗原は急性肝炎の17例の全て陰性であり, 慢性肝炎および肝細胞癌の例では1964-1983年の差は小さかった。また, B型肝炎表層抗原は肝硬変および肝硬変に伴った肝細胞癌の例で減少していた。しかしながら, 2年代におけるB型肝炎表層抗原の減少は肝硬変に伴った肝細胞癌の例では有意であったが, 肝硬変では有意ではなかった。このことは最近の10年間ではB型肝炎ウイルスによる輸血後肝炎がなくなったためと思われた。
  • SOEDARTO SOEKIMAN, 松村 武男
    1987 年 15 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 1987/03/15
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    チクングニアウイルスはトガウイルス科アルファウイルス属で, 東南アジアをはじめアフリカなどに広く浸淫している。ネッタイシマカおよびヒトスジシマカは, 本ウイルスの重要な媒介蚊である。ここでは, インドネシアで採取され, 実験室で継代飼育されたネッタイシマカ (スラバヤ株), およびヒトスジシマカ (マラン株) をfeeding法で感染させ, 両者の唾液腺における本ウイルスの成熟について電子顕微鏡観察を行った。感染後9日から12日の蚊では, ウイルス力価は最高値に達し, そのときの感染蚊の唾液腺細胞では空胞化が認められ, 細胞質内には膜構造に囲まれたウイルス結晶構造が多数認められた。それらの粒子は, 直径55~69nmで, 電子密な直径41~48nmの内部構造を有していた。Virionは, 唾液腺管腔内にも無数に遊離している像が観察された。両種の蚊には, 特に異なった形態学的所見はなく, いずれも感染蚊唾液腺細胞の細胞表面膜からの出芽所見は認められなかった。
  • SOEDARTO SOEKIMAN, 小西 英二, 松村 武男
    1987 年 15 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 1987/03/15
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    スラバヤ系ネッタイシマカにおけるチクングニアウイルス増殖を対照として, 同蚊およびマラン系ヒトスジシマカにおけるデング3型ウイルスの増殖を経口感染により調べた。蚊の平均保有ウイルス量の最高値はいずれの組合せにおいても高く, 感染後8日から12日目に約106から108FFUを示した。この結果からインドネシアの農村部におけるデング出血熱の流行に関与する媒介蚊として, ネッタイシマカの他にヒトスジシマカも重要であることが示唆された
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