特殊教育学研究
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指導事例の分析からみたインテグレーション(<特集II>インテグレーションをめぐって)
柚木 馥
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1974 年 11 巻 3 号 p. 76-84

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抄録
以上、障害児の指導例を事例的にとりあげ指導法とその効果を検討分析しインテグレーションのための条件を考察してきた。これら指導例の教育成果からあきらかとなる、あるいは考えうるインテグレーションのための条件を整理、要約してみることにする。(1)障害児の一般教育への統合をおしすすめるためには、一般学級における教育の教育観とそれをささえる指導体制の条件の37変容がなによりも先ずはかられねばならない。ひとりひとりの個性と能力を本当に尊重し、それに即した個別教育ができるようにすることである。(2)障害児の一般学級への統合は、その子どもの教育的課題と学級の課題が統一された中ではじめて成立する。だから、障害のタイプ、障害の程度、年令、学年などを考慮し、事例ごとにきめこまかく検討されねばならない。統合への実際の段階では、統合前教育、つまり準備指導が必要な場合がある。(4)障害に対応した個別指導の徹底化が必要な場合が多い。このため、障害の実態と予後の方向に対する適切かつ厳密な教育的診断を必要とする。そのため、医師、親、などを含めた協力体制の整備が重大である。(5)障害児を一般学級へ統合する場合も、子どもの個有な障害とその問題点を克服し、経過を正しく究明していく専門の教師をおくことが必要不可欠である。(6)障害児学級、学校のもつ教育的利点を重視し、その長所を最大限に生かし、欠陥を補う新たな指導形態を生みだすことが求められる。
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© 1974 日本特殊教育学会
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