抄録
本研究の目的は、精神薄弱青年の自由再生記憶における符号化と検索の役割を明らかにし、自由再生事態に影響を与える訓練要因を探索することであった。被験者は精神薄弱青年96名であり、16語(4カテゴリー各4語)の記銘リストが用意された。実験は訓練試行とテスト試行で構成され、訓練試行における刺激の提示方法、訓練試行における検索手がかりの与え方、訓練試行とテスト試行でのリストの異同、の3要因を組合わせて8条件が設定された。実験の結果、制限手がかり再生は自由再生よりも再生量が多く、ブロック提示はランダム提示よりも群化の程度が高いことが見出された。また、制限手がかり再生を経験することは訓練試行と同じ記銘材料によるその後の自由再生事態での再生匿を増大させ、群化の程度を高めた。精神薄弱青年は、制限手がかり再生のように検索時の手がかり使用を外部から強制されると、自由再生が改善されると結論づけられた。