1986 年 24 巻 3 号 p. 33-40
重度精神薄弱児50名を対象にして利き手と言語発達の関係に検討を加えた。利き手は、3通りの位置(右側、中側、左側)に提示した対象物に対して7種類の動作を行わせることによって判定した(右利き型、左利き型、混合型、未確立型)。言語発達の程度は愛研式言語発達スクリーニングテスト(アンケート方式)によって評価した。その結果、以下の事が判明した。(1)右利き型と非右利き型の言語発達の程度を比較したが、どのような差もみられなかった。(2)MA3歳群の右利き型の場合、右利き手がより明瞭な者ほど、言語発達の程度はより高いものになっていた。言語機能に関する大脳半球の非対称性の発達的変化に結びつけてこのような結果に考察を加えた。大脳半球の非対称性の発達的変化を積極的に支持する結果は得られなかったが、重度精神薄弱児に対して発達的アプローチをとる必要性は示唆された。