本研究は、重度発達遅滞児の姿勢や運動の歪みは乳児期に獲得すべき能力-先行研究の「はいはい」以前の能力が獲得されていないことに原因があるのではないかと考え、腹臥位姿勢の指導方法を工夫しながらとりくみ、その効果を検討したものである。子どもの状態にあわせ頭部を挙上しやすい方法をとり、脊椎の彎曲を矯正する方法を加えながら指導した。その結果、抗重力伸展活動を獲得し、視覚範囲が広がった。そして、継続するにつれ発声や笑顔を獲得し、探索活動が広がった。また、歩行姿勢が改善され、目的的行動が生起した。本研究により、腹臥位姿勢の指導は抗重力伸展活動を発達させるのみならず、言語機能や外界探索への活動意欲を高め、表情を豊かにし、発達の遅れをも改善する効果があることが考察された。抗重力伸展活動の制限が姿勢や運動に歪みをもたらし、他の諸機能の発達をも抑制する可能性が示唆された。