抄録
前言語期のダウン症児に対しサーキット・おやつ場面を設定し前言語的伝達行為の指導を10ヵ月間にわたって行った。両場面のスクリプト化、構造分析によって50の基本的活動が抽出された。そのうち10の活動において対象児からの要求行動が出現するように場面が構成された。要求場面では指導者は適切な期間(5秒程度)待つことが指示された。対象児の理解のレベルは7段階で、表出のレベルは6段階で評価された。対象児は、初期には文脈の理解が困難で指導者の身体援助やモデル提示も効果が少なかった。しかし中期には言語指示の理解は困難だったものの、援助によってルーティンへの参加がスムーズになり、後期には言語指示の理解が可能になった。要求行動は初期には注視による伝達が多かったが徐々に高次化し、後期には7の要求行動がジェスチャーや発声を伴なったものへと変化していった。またこの過程は、理解の過程と関連していた。