特殊教育学研究
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聴覚障害児の隠喩文理解における修辞性の影響 : 隠喩文の心理的印象評定に基づいて
澤 隆史吉野 公喜
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キーワード: 聴覚障害児, 隠喩文, 修辞性
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1998 年 36 巻 2 号 p. 33-41

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抄録

160名の聴覚障害児を対象に隠喩文の理解課題を、45名の大学生を対象に隠喩文の心理的印象評定課題を行い、聴覚障害児における隠喩文の理解困難度と比喩の修辞性との関連を検討した。評定値に基づく因子分析の結果、隠喩文の修辞性に関与する因子として、「慣用性」、「知的洗練性」、「愉快性」の3つを抽出した。各隠喩文の困難度と修辞性との関連を分析した結果、聴覚障害児にとって理解が容易な隠喩文は「慣用性」、「愉快性」が高いこと、理解が困難な隠喩文は「知的洗練性」が高いことが示唆された。また、聴覚障害児を隠喩文理解の良好な群と困難な群に分け、両群における隠喩文の困難度と修辞性との関連を分析した。その結果、隠喩文の理解が良好な子どもにとっては、文の「知的洗練性」と「愉快性」が、理解が困難な子どもにとっては「慣用性」がそれぞれ理解に影響を及ぼすことが示された。以上の結果から、聴覚障害児の隠喩文理解における修辞性の影響が示唆された。

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© 1998 日本特殊教育学会
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