特殊教育学研究
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重度知的障害児におけるコミュニケーションの機能とモードの獲得・般化・維持の比較 : 写真と身振りを用いて
小田 浩伸藤田 継道井上 雅彦
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1998 年 36 巻 2 号 p. 21-31

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抄録

本研究では、音声表出言語が全くなく、かつ、音声理解言語が殆どない重度知的障害青年4名を対象に、2つのコミュニケーション機能(マンドvsタクト)と2つのコミュニケーションモード(受容vs表出)および2つのシンボル(写真vs身振り)から成る8課題について、獲得の早さと般化・維持の容易さが条件交替デザインによって比較された。その結果、4名全員が写真と身振りを用いたマンドの受容の2課題を除く6課題を獲得した。また、6課題の中では4名全員に共通して「写真によるタクトの受容」課題の獲得・般化・維持が最も容易であり、「身振りによるタクトの表出」課題の獲得・般化・維持が最も困難であった。シンボルが写真・身振りのいずれの場合でも、全対象児にとってマンドはタクトよりも表出モードでは獲得・般化・維持が容易であった。どちらのシンボルの場合でも、全対象児にとって、タクトでは受容モードの方が表出モードよりも獲得・般化・維持が容易であった。またシンボルは、全対象児にとって写真の方が身振りよりも獲得・般化・維持が容易であった。これらの結果から、音声理解言語も表出言語も乏しい重度知的障害児にとっては、実物と類縁性の高い写真や写像性の高い身振りをコミュニケーションの媒体とし、その産出が簡単なポインティングや身振りの獲得を目指した指導の有効性が示唆された。

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© 1998 日本特殊教育学会
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