1999 年 37 巻 1 号 p. 49-57
重度の障害児とのやりとりにおいて、関わり手は表情や声、動作を介して模倣させようという意図で働きかける。しかし、やりとりがスムーズに展開せず、一方的なやりとりになりがちである。我々は、他者とのやりとりの中で、ことばのみでなく、状況や表情、声の様子、視線などから他者の意図を理解していく。重度の障害児においても、そういった状況の中で、何らかの形で他者の意図を理解していると考えられる。本稿においては、初期における他者の意図理解がどのように発達するかを検討する。中でも、他者の意図理解を模倣という観点から捉え、他者の意図理解と模倣との関係を検討し、障害児における問題点を整理した。結果、他者の意図理解にとって模倣の果たす役割は大きく、模倣を介して他者認識を発達させ、それと同時に他者の意図理解も可能になると考えらた。障害児の他者の意図理解の問題は、他者認識および視線、共同注視行動、模倣の困難さであると考えられた。