抄録
本研究は、思春期自閉症者1名が訓練者との間ですでに獲得していた他者からの話題提示に対して質問するスキルを、家庭の食事場面において使用するために、家族側(父親、母親、同胞)にどのような条件が整備される必要があるか検討を行った。スキルは『a)「だれ」は・が、b)「いつ」のc)「いつ」に、d)「どこ」で、e)「なに」のf)「なに」をした』の中のいくつかが欠落している文章に対して質問するというものであった。各条件は環境随伴性を直接操作しない条件と、環境随伴性を直接操作していく条件とに分けられた。また家族は、対象者が質問スキルを獲得していることを知らされてはいなかった。結果は、家族側の随伴性をスキル獲得訓練時と同一の刺激提示をするように操作することで、獲得していた質問スキルの生起が観察された。これにより獲得された質問スキルが、家庭場面において使用されるためには、家族側への介入の必要性があることが示唆された。