2002 年 40 巻 1 号 p. 13-23
本研究は、老年者における/ba/と/wa/の同定能力とフォルマント遷移の弁別能力との関係を、実験的に解明することを目的とした。老年者18名と若年者16名を対象とし、フォルマント遷移を一定の間隔で変化させた/ba/から/wa/に至る刺激連続体を用いて、同定課題実験と弁別課題実験を行った。その結果、(1)老年者では、/ba/と/wa/のカテゴリー判断の精度、フォルマント遷移の弁別能力がともに低下していること、(2)カテゴリー判断の精度とフォルマント遷移の弁別閾には、中等度の相関があることが明らかにされた。このことから、老年者の/ba/と/wa/の同定能力の低下には、フォルマント遷移の弁別能力の低下が関わっていると考えられた。また、カテゴリー境界の位置とフォルマント遷移の弁別閾には、高い相関があることが示された。