抄録
本研究では、集合数の報告に困難を示す中度知的障害児を対象として、その改善を試みた。対象児が示した困難性のひとつは、計数操作に関するものであり、その改善のために分化強化操作を用いた。いまひとつの困難性は、集合数報告自体であり、対象児は物品の数がいくつの場合にも固執的に「6個」と報告した。そしてその改善では、対象児の示す固執的行動自体を利用することを試みた。つまり、課題を対象児の「6個」が正反応になるようにして、さらに計数操作で得られた数を数字カードで提示することにより強調した。その結果、以前は刺激として何ら機能していなかった計数操作で得た数が、刺激として機能しはじめた。遅延プロンプトの適用が可能になったので、数字カードを遅延的に提示する方法を用い、対象児の集合数報告行動を改善した。これらの結果から、固執的な行動の改善のために、その行動自体を利用することの有効性が示された。