特殊教育学研究
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41 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 吉井 秀樹, 吉松 靖文
    原稿種別: 本文
    2003 年 41 巻 2 号 p. 217-226
    発行日: 2003/07/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    この10年間、数多くの研究が自閉性障害児者における心の理論の障害を指摘してきた。一方で、自閉性障害児者が感情理解や自己理解に困難をもつことを示す研究もある。しかし、自己理解と他者理解(心の理論)、感情理解の関係性を明らかにした研究はない。本研究では、年長の自閉性障害児と精神遅滞児に対し、自己理解課題、他者理解課題、感情理解課題を実施した。その結果、自閉性障害児は精神遅滞児に比べいずれの課題においても有意に成績が劣るものの、自己理解の成績が高い自閉性障害児は成績が低い自閉性障害児に比べて他者理解課題の得点が有意に高いことを見いだした。これらの結果は、年長自閉性障害児が他者の心の理解だけでなく自己の理解や感情の理解にも困難をもつこと、また、自己の理解の能力が他者の心の理解の能力と関係があることを示唆している。
  • 樋口 一宗, 高橋 知音, 小松 伸一, 今田 里佳
    原稿種別: 本文
    2003 年 41 巻 2 号 p. 227-234
    発行日: 2003/07/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    小学校5年生の児童45名を対象に、言語理解にかかわると考えられる11種の課題を実施した。その結果、読解能力は、心的辞書の効率、漢字、知能、作動記憶因子によって、また、聴解能力は、漢字、知能、心的辞書の効率因子によって、それぞれ説明できることが示された。言語理解に共通してかかわる因子は、漢字、知能、心的辞書の効率の3因子であった。これらの因子にかかわる課題を組み合わせて実施することによって、言語理解上の諸問題をもつ児童の認知的特徴を分析できることが示唆された。
  • 島村 睦仁, 藤金 倫徳
    原稿種別: 本文
    2003 年 41 巻 2 号 p. 235-243
    発行日: 2003/07/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、集合数の報告に困難を示す中度知的障害児を対象として、その改善を試みた。対象児が示した困難性のひとつは、計数操作に関するものであり、その改善のために分化強化操作を用いた。いまひとつの困難性は、集合数報告自体であり、対象児は物品の数がいくつの場合にも固執的に「6個」と報告した。そしてその改善では、対象児の示す固執的行動自体を利用することを試みた。つまり、課題を対象児の「6個」が正反応になるようにして、さらに計数操作で得られた数を数字カードで提示することにより強調した。その結果、以前は刺激として何ら機能していなかった計数操作で得た数が、刺激として機能しはじめた。遅延プロンプトの適用が可能になったので、数字カードを遅延的に提示する方法を用い、対象児の集合数報告行動を改善した。これらの結果から、固執的な行動の改善のために、その行動自体を利用することの有効性が示された。
  • 手島 由紀子
    原稿種別: 本文
    2003 年 41 巻 2 号 p. 245-254
    発行日: 2003/07/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    小論は、1990年ごろから本格的に研究が進められてきたアメリカ合衆国の障害児教育における自己決定に焦点を当て、その展開を整理することを目的とした。まず自己決定の定義を。検討し、実践に向けた取り組みを、(1)自己決定モデル、(2)自己決定カリキュラム、(3)自己決定の教育方略の3点から検討した。自己決定モデルについては、自己決定を認識やスキルの獲得のプロセスとして描いたモデル、多様な環境を整備する必要性を強調したモデル、自己決定の育成に向けた教師の役割を明確化したモデルを取り上げた。自己決定カリキュラムでは、生徒が自ら選択した目標を達成すること、およびIEPミーティングでイニシアチブを取ることを目指して設計されたカリキュラムを概観した。自己決定の教育方略としては。自己決定に関連する目標をIEPに記載すること、自己決定の機会を提供すること、自己決定的な行動に周囲の者が応答すること、応答的な環境を作ること、親の参加を得ることの5項目を吟味した。
  • 澤 隆史
    原稿種別: 本文
    2003 年 41 巻 2 号 p. 255-267
    発行日: 2003/07/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    聴覚障害児・者の作動記憶について、(1)コード化の特徴と、(2)作動記憶と読み能力との関連、を扱った近年の研究を取り上げて展望した。コード化の特徴については、手話を刺激とした場合は手話的コード化が優位となるが、文字を刺激とした場合は多様なコードが使用され、刺激の種類や呈示・再生方法によって異なったコード化が行われることが明らかにされた。また作動記憶容量と読み能力との間には相関関係が示唆されているものの、記憶課題の妥当性や信頼性が不十分である可能性も残された。近年の作動記憶研究では二重課題法を用いた詳細なモデルの構築が進められているが、聴覚障害児・者を対象とした場合、作動記憶モデルを踏まえた検討は端緒についたばかりである。研究を進める上で、研究方法の妥当性・信頼性を高めることや発達的観点に基づく研究が必要であること等、今後の課題について述べた。
  • 石原 保志, 板橋 安人, 斎藤 佐和
    原稿種別: 本文
    2003 年 41 巻 2 号 p. 269-278
    発行日: 2003/07/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では青年期における発話指導の効果を検討するために、高等教育機関に在籍する聴覚障害者に個別指導を行い、構音の変化について検討した。発話に関する個別指導を受けた者3名と受けなかった者3名の発音明瞭度の変化について、児童期から青年期にかけての単音節発音明瞭度検査の結果も参考にしながら検討した結果、指導を受けていない者は聾学校中学部以降、発音明瞭度の向上が認められなかったが、指導を受けた者は青年期においても子音の構音が改善されており、この中には児童期に未習得であった音が含まれていることが明らかになった。また幼児期、児童期において学習に困難が伴う無声摩擦音がすべての指導対象者で改善されたこと、単音レベルからの構音指導を行わない場合でも発音明瞭度が向上している音があること等が示された。
  • 別府 哲
    原稿種別: 本文
    2003 年 41 巻 2 号 p. 279-283
    発行日: 2003/07/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
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