抄録
小学2~6年生児童における漢字書字低成績の背景要因を検討するため、漢字基礎スキルテスト(部品検出テスト、部首位置テスト、部首名テスト、筆順テスト)と認知スキルテスト(言語性短期記憶テスト、視覚記憶テスト)を行った。対象は、3,040名であった。書字テストで無回答が有意に多かった児童は0~5パーセンタイルであった(重度低成績)。担任教員により学習上の配慮を行っていると判断された児童の低成績(要配慮―低成績)は12~28パーセンタイルの範囲であった。漢字の読字低成績を伴う書字低成績児の背景要因として、言語性短期記憶と部品・部首知識の低成績が独立して関与していた。書字のみ低成績を示す児童の背景要因にも、言語性短期記憶と部品・部首知識の低成績が関与していた。要配慮―低成績児のオッズ比は、重度低成績児より低かった。漢字書字低成績に対する支援として、背景要因の有無を評価し、その軽減を図る指導が効果的であることを指摘した。