2017 年 55 巻 3 号 p. 171-181
本稿では、先天盲ろうの子どもを対象に行われた実践研究のなかから、特にかれらとかかわり手とのコミュニケーションの成立・展開に関する研究に絞って動向を概観した。はじめに、先天盲ろうの概念やかれらの抱える困難について述べたうえで、先天盲ろうの子どものコミュニケーションを捉える視点としての「共同性」と「相互性」に関する研究について整理した。そして、コミュニケーションシステムの開発と導入のあり方について、おもに触覚による手がかりやサインに焦点を当て、実際のかかわり合いの具体例を紹介するとともに、そこでの課題について述べた。次に、体系的なコミュニケーション手段(指文字や手話など)を獲得した子どもとかかわり手との「対話」に関する実践研究を概観し、コミュニケーションにおける宣言的・叙述的な機能に着目するかかわり合いの重要性について述べた。最後にこうした観点と深く結びつく「共創コミュニケーション研究」の取り組みとその展望について述べた。