2022 年 59 巻 4 号 p. 245-256
本研究では、歩行指導用経路を普段使用している視覚障害者によって事前に白杖歩行してもらい、その際に歩行で必要とする情報に関して事前調査を行った。その後、それらの情報を取り入れた触地図を作成し、その情報を備えた触地図によって、視覚障害児1名が白杖歩行スキルを獲得するための触地図歩行学習と単独歩行学習を行った。指導前には、対象経路に必要な歩行スキルの分析を試みた。指導は、学習室と現実場面にて行われた。学習室では、触地図を使い現実場面をシミュレートする学習を構成し、歩行に必要な環境情報の取得方法の指導を行った。現実場面では、学習室場面での指導の効果を評価するとともに、白杖歩行に必要な指導を行った。その結果、視覚障害のある生徒が白杖歩行するためには、事前に経路の「往路」「復路」について必要とする情報を反映した触地図学習と現実場面での一連の指導が効果的であった。また、白杖歩行スキル獲得において、移動環境における困難性(移動時の方向定位の問題)が存在することも明らかになった。