2023 年 60 巻 4 号 p. 213-223
本研究では、公立小学校の通常学級に在籍する場面緘黙の2年生男児に対し、学級担任による支援で発話状況がどの程度改善するのかを明らかにすることを目的とした。そこでまず、対象児が話すことに対し前向きになることを目的として、4月から学校において安心できる環境づくりを行った。次に、6月から翌年2月まで、対象児が学校で発話できるようになることを目的として、学校や対象児の自宅、医療機関において計22回の発話支援を行った。学校での発話支援の際には、担任が作成したお話チャレンジカードや九九がんばりカード、質問カードによる発話練習を行った。これらの支援の結果、4月には学校で発話できなかった対象児が、翌年2月には担任が近くにいれば意見交流やスピーチでの発表など、授業中の発話が求められる場面で声を出せるようになった。以上より、通常学級の担任が緘黙児の支援を行うことで緘黙児の発話状況を改善させることは可能であることが示唆された。