特殊教育学研究
Online ISSN : 2186-5132
Print ISSN : 0387-3374
ISSN-L : 0387-3374
「正しく整った文字」を書くことは学力に関連するか ―2種の漢字採点基準における書き成績と学力との関係の比較―
荻布 優子川崎 聡大奥村 智人松﨑 泰
著者情報
ジャーナル フリー 早期公開

論文ID: 22A023

詳細
抄録

本研究は小学1~6年生155名を対象に漢字書字課題を行い、正しく整っている/判読可能の2基準で採点し、学力及び視覚情報処理能力との関係を検討した。結果、双方の採点基準で学力との相関を認めたが、整った文字は判読可能文字に比して相関係数が有意に高くはならなかった。また文字の正確性や綺麗に書くこと自体が学習となる下学年では整った文字と視知覚視覚認知の相関が強く、相関は学年が上がると弱くなることから、整った文字を習得する過程では視知覚・認知機能の負荷が高く、上学年で整った文字を書くためには文字の詳細なイメージを思い浮かべる必要性から視覚性ワーキングメモリへの負荷の高さが示唆された。よって学力を従属変数とした場合に正しく整った文字が書けることの蓋然性は確認されず、文字形態を整える指導に注力することは発達障害をはじめとする認知機能に個人内差のある児童の学習到達度には好影響とはならない可能性が考えられた。

著者関連情報
前の記事 次の記事
feedback
Top