抄録
本研究は、全国の肢体不自由・病弱特別支援学校に多く在籍している重度脳機能障害を有する超重症児の教育的対応における不快状態評価に、鼻部皮膚温度が活用可能であるかを探索的に検討することを目的とした。対象児は、覚醒と睡眠の区別すら困難であった超重症児2名であった。教育実践から選定した教育的対応の鼻部皮膚温度を測定した。常時使用している心拍モニターによって得られる心拍値と鼻額皮膚温度を比較することで、評価の妥当性について検討を行った。その結果、情動換起に伴う鼻部皮膚温度の変動を取り出す処理によって得られた鼻額差分温度の低下と心拍の加速反応との間で、50%以上の生起一致率が認められた。また、生起が一致した刺激は聴覚・触覚刺激のカテゴリーに偏りが確認された。このことから、鼻部皮膚温度が超重症児の不快情動を引き起こす苦手な刺激を探索する際に活用しうることが推察された。