抄録
言語発達の遅れのある児童に対する文法指導の実態を明らかにするため、東京都のことばの教室が設置されている78の小学校にアンケート調査を行った。各校の代表1名の教員からオンラインで回答を得た。質問項目は在籍児の学年層や医学的診断、指導頻度と時間、指導場面、指導する文法項目、指導手続き、活動や教材、児童以外の助言や指導の相手、指導効果の評価法に関するものであった。有効回答は51件(65.4%)であった。回答から、言語発達の遅れがある児童は学年層を問わず文法指導を受ける割合が少ないことが明らかとなった。指導手続きはリキャストやモデリングなど自然なコミュニケーションを介した暗黙的指導がよく行われ、目標の文法規則に焦点化した明示的指導はあまり行われない傾向があった。また、現状より指導頻度や指導時間を増やすことや、個別指導に加えて学校生活に即した場での指導を行う必要性が認識されていることも示唆された。