2018 年 95 巻 p. 15-28
本研究の目的は,高等学校5 年一貫校専攻科で学ぶ看護学生の看護倫理に関する思考の特徴を見出し倫理教育への課題を明らかにすることである。5 年一貫校専攻科の看護学生を対象に①宗教上の理由からの輸血の拒否,②出生前診断による選択的人工妊娠中絶,③脳死者からの臓器移植,など6 状況を設定し,倫理上の諸問題の思考の特徴を見出す質問紙調査を行った。学生の価値基盤は倫理原則であったが,倫理的根拠ではなく自己の感情による判断の可能性があり多角的な思考ができていなかった。さらに,10 名を対象とした半構造的面接を行い,倫理的問題と認知した要因として,【倫理的問題の認知の基盤】,【認知の仕方】,【感情】の3 カテゴリーが形成された。学生は看護観,学習内容との比較,患者の言動,患者の立場の想像から倫理的問題を捉え解釈し思考していたことから,倫理教育に関する課題は倫理に関する知識の確実な獲得と看護観の深化,感受性豊かな学生に育成することが示唆された。