2005 年 48 巻 4 号 p. 257-261
症例は48歳の男性. 2003年4月より口渇, 多飲多尿, 2カ月で6 kgの体重減少あり. 近医にて随時血糖723 mg/dl, HbA1c 11.9%を指摘され, 当院を紹介され入院となった. 清涼飲料水の多飲が認められたため, 当初は清涼飲料水ケトーシスと診断し強化インスリン療法を行った. その後, 抗GAD抗体4,270.0 U/ml, ICA 1,280 JDF単位, IA-2抗体4.4 U/ml と各種膵島関連抗体が高値であることが判明したが, 内因性インスリン分泌は尿中CPR 32.1~48.1 μg/日, グルカゴン負荷試験にて血中CPR負荷前1.75 ng/ml, 負荷後6分3.13 ng/ml と枯渇には至っておらず, 緩徐進行1型糖尿病と診断した. 退院時インスリン治療は不要と思われたが, 中間型インスリンの就寝前2単位皮下注射を継続して退院した. 抗GAD抗体は退院後も高値であるが, 少量のインスリン治療を継続することで, 血中CPRは1年半経過した現時点でも入院時と同等以上の反応を保持しており, インスリン治療の継続がβ細胞の破壊, 内因性インスリン分泌の低下を抑制している可能性が考えられた.