抄録
症例は62歳, 男性. 1993年5月に慢性C型活動性肝炎と診断され, インターフェロン (以下, IFNと略す) 療法を施行された. 2回施行後, ブドウ糖負荷テストは正常型であった. 2002年12月よりリバビリン併用IFN療法3回目を開始した. 2003年1月頃より口渇, 体重減少, 全身〓怠感が出現し, 3月に随時血糖値469 mg/dl, HbA1c 6.5%と高血糖を認めた. 抗GAD抗体価は, IFN2回目終了後に陽性となり, 糖尿病発症時に異常高値を示した. 内因性インスリン分泌の低下も認め, 1型糖尿病と診断した. HLA typingでは1型糖尿病に疾患感受性のあるハプロタイプを認めた. HLAなどの遺伝的背景をベースに, 繰り返すIFN治療を契機として自己免疫反応が惹起され, 1型糖尿病の発症に至ったと推察される. IFN治療において抗GAD抗体価を定期的に検査することは1型糖尿病発症の予知, 早期発見に有用である可能性が示唆された.