糖尿病
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症例報告
妊娠初期に膵外分泌酵素上昇を伴う糖尿病ケトアシドーシスを発症したが,短期間で耐糖能が正常化し正常分娩に至った1例
柴田 早織岩瀬 正典藤井 裕樹中村 宇大佐々木 伸浩井元 博文中並 尚幸飯田 三雄
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2007 年 50 巻 1 号 p. 31-36

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抄録

症例は26歳女性.初回妊婦.2型糖尿病の家族歴あり.妊娠8週頃より妊娠悪阻が出現し,11週に突然口渇,全身倦怠感,軽度の意識障害が出現した.BMI 15.7 kg/m2, 血糖1,049 mg/dl, HbA1c 5.5%, 血中総ケトン体13,260 μmol/l, pH 7.282, BE-17.9 mmol/l, 糖尿病ケトアシドーシスと診断し,インスリン治療を開始した.抗GAD抗体陰性,1型糖尿病に関連するHLAなし.血清膵外分泌酵素が上昇していたが,膵炎を示唆する所見はなかった.その後血糖が低下し,インスリンを中止し得た.その時の75g OGTTは正常であった.妊娠週数が進んでも血糖は良好であり,妊娠39週で3,146 gの正常女児を経膣分娩した.妊娠中に劇症1型糖尿病類似の糖尿病ケトアシドーシスを発症したが,内因性インスリン分泌能は保たれており,短期間のインスリン療法後耐糖能正常となり,正常分娩に至った極めて稀な症例である.

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© 2007 一般社団法人 日本糖尿病学会
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