抄録
症例は67歳女性.2005年3月,左足第1趾の発赤腫脹を契機に近医にて初めて糖尿病,高脂血症,高血圧症,足壊疽と診断された.治療を開始されたが改善なく当院紹介入院.HbA1c 10.7%, 尿蛋白4 g/日,前増殖網膜症,下肢腱反射消失,ABI右0.76, 左0.42, 左足第1趾に4 cm大の潰瘍を認めた.合併症の進行した糖尿病とFontaine IV度の閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans, ASO)と診断.抗生剤,PGE1を2週間投与したが効果なく,皮膚科にて中足骨切断の適応とされた.そこでLDLアフェレシス(LDL apheresis, LDL-A)を2回/週,計10回施行したところ,潰瘍の縮小を認め,切断を回避できた.LDL-A終了5カ月後の外来では潰瘍はほぼ治癒状態であった.透析患者のASOにLDL-Aの有効性が近年報告されているが,非透析患者においても有効であり,ASO合併糖尿病足病変の治療の選択肢として有用である.