糖尿病
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症例報告
糖尿病を合併し,免疫グロブリン療法により改善をみた抗GAD抗体陽性を示した小脳失調症の1例
荒井 宏司田中 智洋丸浜 伸一郎森 潔藤倉 純二冨田 努葛谷 聡山田 豪藤井 寿人中津留 有子南部 拓央三浦 晶子金本 巨哲森山 賢治八十田 明宏海老原 健平田 雅一益崎 裕章細田 公則高橋 良輔中尾 一和
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2007 年 50 巻 9 号 p. 703-707

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抄録

症例は66歳女性.58歳時に小脳失調症と診断.64歳頃糖尿病と診断されSU剤を投与されていたが,半年前より血糖コントロールが悪化したため当科を紹介.BMI 15, HbA1c 10.4%, FBS 130 mg/dL, 75 gOGTT2hr値324 mg/dL. 著明なインスリン分泌低下を認めた.血清抗GAD抗体141,000 U/mLと著明高値,抗IA-2抗体(-), 髄液抗GAD抗体644 U/mL. 姿勢保持障害とdysmetria, 自発眼振,下肢痙性亢進を認め,MRI上小脳の萎縮を確認した.最近,小脳失調症の一部が抗GAD抗体高値を示し,その多くが糖尿病を合併することが報告されている.免疫グロブリン静注療法1週間後より神経学的症状・徴候が改善し,1カ月後抗GAD抗体価は68,500 U/mLまで低下した.インスリン分泌能に対する効果は現時点では明らかでない.免疫組織化学において患者血清はラット小脳皮質および膵島を認識した.糖尿病と小脳失調発症に共通の自己免疫機序の関与が示唆される興味深い症例である.

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© 2007 一般社団法人 日本糖尿病学会
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