Basal-bolus療法を実施中のインスリン依存状態の糖尿病患者を対象として,持効型溶解インスリンアナログ製剤であるインスリン デテミル(以下,デテミル)を48週間投与した際の有効性および安全性を,NPHインスリン(以下,NPH)を対照薬とした.1型糖尿病患者294例(デテミル投与群196例,NPH投与群98例)および2型糖尿病患者102例(デテミル投与群67例,NPH投与群35例)を対象とした.1型糖尿病患者では,有効性の主要評価項目である投与終了時のHbA
1cの群間差(デテミル-NPH)は0.03%〔95%信頼区間(-0.14, 0.21)〕であり,信頼区間の上限が予め定めた非劣性の許容限界である0.4%未満であったことから,HbA
1cを指標とした血糖コントロールにおいて,デテミルのNPHに対する非劣性が確認された.投与終了時の朝食前空腹時血糖値はデテミル投与群でNPH投与群に比べ有意に低く(p=0.03), 朝食前空腹時血糖値の個体内変動はデテミル投与群で有意に小さかった(p<0.01). 夜間低血糖発現の相対リスク(デテミル投与群/NPH投与群)は0.69〔95%信頼区間;(0.47, 0.99)〕であり,デテミル投与群の夜間低血糖発現リスクはNPH投与群に比較して有意に低かった(p<0.05). また,投与終了時の体重はデテミル投与群でNPH投与群に比べ有意に低かった(p<0.01). その他の有害事象,臨床検査などの安全性の指標については,両薬剤とも同様の成績が得られた.インスリン抗体について検討した結果,若干のデテミル特異抗体の上昇が認められたが,HbA
1cの変化量と抗体の変化量との間には正の相関は認められず,抗体の上昇に伴いHbA
1cが悪化する傾向はみられなかった.2型糖尿病では,例数が少ないため結果の解釈には注意が必要であるが,全体として1型糖尿病患者の成績と同様の傾向がみられた.本試験で得られた成績および本剤の特徴から,デテミルはbasalインスリンとして有効かつ安全な薬剤であると考えられる.
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