糖尿病
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50 巻 , 9 号
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原著
  • 小林 正, 岩本 安彦, 加来 浩平, 河盛 隆造, 田嶼 尚子
    2007 年 50 巻 9 号 p. 649-663
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    Basal-bolus療法を実施中のインスリン依存状態の糖尿病患者を対象として,持効型溶解インスリンアナログ製剤であるインスリン デテミル(以下,デテミル)を48週間投与した際の有効性および安全性を,NPHインスリン(以下,NPH)を対照薬とした.1型糖尿病患者294例(デテミル投与群196例,NPH投与群98例)および2型糖尿病患者102例(デテミル投与群67例,NPH投与群35例)を対象とした.1型糖尿病患者では,有効性の主要評価項目である投与終了時のHbA1cの群間差(デテミル-NPH)は0.03%〔95%信頼区間(-0.14, 0.21)〕であり,信頼区間の上限が予め定めた非劣性の許容限界である0.4%未満であったことから,HbA1cを指標とした血糖コントロールにおいて,デテミルのNPHに対する非劣性が確認された.投与終了時の朝食前空腹時血糖値はデテミル投与群でNPH投与群に比べ有意に低く(p=0.03), 朝食前空腹時血糖値の個体内変動はデテミル投与群で有意に小さかった(p<0.01). 夜間低血糖発現の相対リスク(デテミル投与群/NPH投与群)は0.69〔95%信頼区間;(0.47, 0.99)〕であり,デテミル投与群の夜間低血糖発現リスクはNPH投与群に比較して有意に低かった(p<0.05). また,投与終了時の体重はデテミル投与群でNPH投与群に比べ有意に低かった(p<0.01). その他の有害事象,臨床検査などの安全性の指標については,両薬剤とも同様の成績が得られた.インスリン抗体について検討した結果,若干のデテミル特異抗体の上昇が認められたが,HbA1cの変化量と抗体の変化量との間には正の相関は認められず,抗体の上昇に伴いHbA1cが悪化する傾向はみられなかった.2型糖尿病では,例数が少ないため結果の解釈には注意が必要であるが,全体として1型糖尿病患者の成績と同様の傾向がみられた.本試験で得られた成績および本剤の特徴から,デテミルはbasalインスリンとして有効かつ安全な薬剤であると考えられる.
  • 小林 正, 岩本 安彦, 加来 浩平, 河盛 隆造, 田嶼 尚子
    2007 年 50 巻 9 号 p. 665-677
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    持効型溶解インスリンアナログ製剤であるインスリン デテミル(以下,デテミル)を経口糖尿病薬と併用した際の有効性および安全性を,NPHインスリン(以下,NPH)を対照薬として検討した.対象はインスリン治療歴がなく,経口糖尿病薬によって治療中の2型糖尿病患者363例(デテミル投与群180例,NPH投与群183例)とし,試験期間は36週間とした.本試験における有効性の主要評価項目であるHbA1cの群間差(デテミル-NPH)は0.07%〔95%信頼区間:(-0.07; 0.21)〕であり,信頼区間の上限が非劣性の許容限界として設定した0.4%未満であったことから,デテミルのNPHに対する非劣性が確認された.併用している経口糖尿病薬の種類がHbA1cに及ぼす影響について検討したが,有意な影響は認められなかった.朝食前空腹時血糖の平均値は両投与群ともに改善が認められた.体重あたりの平均インスリン投与量は,デテミル投与群0.16単位/kg, NPH投与群0.14単位/kgであり,投与量比(デテミル/NPH)は1.189であった.すべての低血糖および夜間低血糖の発現リスクは,デテミル投与群においてNPH投与群と比較して低い傾向が認められた.相対リスク(デテミル投与群/NPH投与群)はすべての低血糖で0.71, 夜間低血糖では0.60であった.デテミル投与群では体重増加の程度がNPH投与群に比べて小さかった.その他の有害事象,臨床検査などの安全性の指標については,両薬剤とも同様の成績が得られた.デテミル特異抗体およびデテミル-ヒトインスリン交叉抗体の増加が認められたが,中和抗体の産生を示唆する傾向は認められず,抗体の上昇に伴ってHbA1cが悪化する傾向はみられなかった.本試験で得られた成績および本剤の特徴から,デテミルと経口糖尿病薬の併用は2型糖尿病において有用な治療方法であると考えられる.
  • 高橋 輝, 武村 次郎
    2007 年 50 巻 9 号 p. 679-683
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    インスリン治療開始後に肝障害が生じることは一部の症例報告で指摘されているが,その頻度などの詳細は不明である.今回われわれはトランスアミナーゼ値が施設基準値を超えたものを肝障害と定義し,インスリン導入目的にて入院した119人の患者を調査した.導入前に既に肝障害のあった39人を除いた80人のうち,施設基準値をわずかでも超えたものは14人(17.5%), 基準値上限の1.5倍以上に達したものも5人(6.25%)となった.インスリン製剤の添付文書にはその頻度は0.1%未満と記載されており,日常臨床では肝障害の頻度が高いことがわかった.肝障害は一過性で,インスリン投与を継続してもトランスアミナーゼ値は正常化したが,以前の報告ではインスリンの中止や変更が必要とするものがあり,肝障害出現時の対応は確立していない.インスリン治療開始後の肝障害について若干の文献的考察とともに報告する.
  • 河原 利夫, 田原 千賀子, 鶴木 多恵子, 鳥田 宗義, 臼田 里香
    2007 年 50 巻 9 号 p. 685-689
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    HbA1c 10%以上の治療歴のない2型糖尿病患者の初回教育入院後の治療法の推移を調査し,治療法の予測因子を検討した.対象は2週間の教育入院パスを使用し外来追跡可能であった146名の患者(21歳∼77歳,男性82名,女性64名)で,HbA1c<7.0%が維持可能となったときの治療法を食事療法単独群(Group A: 84名)と,低血糖を起こしにくい薬物療法群(Group B: BG, αGI, TZD使用群23名),低血糖の可能性のある薬物療法群(Group C: SU, インスリン使用群39名)の3群に分けて検討した.入院時の年齢,FPG·HbA1c, BMI, 尿中CPR値は各群で有意差を認めなかったが,低血糖の可能性のある薬物療法群では入院時既に糖尿病性網膜症を有していた患者が有意に多かった.血糖不良の治療歴のない2型糖尿病患者の治療法の予測因子として,糖尿病性網膜症の存在は重要である.
症例報告
  • 多田 裕子, 金沢 一平, 栗岡 聡一, 西木 正照, 山口 徹, 杉本 利嗣
    2007 年 50 巻 9 号 p. 691-694
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    80歳,女性.20年来の2型糖尿病に対し内服加療していた.治療を自己中断し,意識障害にて救急搬送.血糖値1,125 mg/dl, 血清Na 165 mEq/l, 血漿浸透圧420 mOsm/kg H2O, 尿ケトン体陰性から,高血圧高浸透圧症候群と診断した.緩徐に血糖値,血清Na値の是正を行ったが,意識障害は遷延した.頭部CT·MRI像にて橋外脱髄症(extrapontine myelinolysis: EPM)を認め,脳波は全般的な大脳障害の所見であった.EPMは橋中心性脱髄症と同機序に生じるとされ,両者は浸透圧性脱髄症候群と呼ばれる.錐体路に限局した病変を認めるにもかかわらず,運動障害をきたさず,画像所見と臨床症状が解離した報告は少ない.高血糖高浸透圧症候群において意識障害の遷延を認める場合,臨床症状に見合う画像所見を認めなくとも,浸透圧性脱髄症候群の合併を考慮する必要がある.
  • 上野 八重子, 藤田 麻美, 白藤 雄五, 野田 浩夫, 吉見 真一
    2007 年 50 巻 9 号 p. 695-701
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は59歳女性.53歳で糖尿病を発症し,抗GAD抗体陽性であった.インスリン療法を行い食事療法のみで治療可能となった.その後血糖コントロールが悪化してインスリンを再開したが1年2カ月間治療を中断.2004年5月両足しびれと体重減少にて来院(HbA1c 18.2%). 超速効型アスパルト1日3回注射を開始.数日後より顔面・下肢の浮腫が出現したが利尿剤で改善.6週後より背部・胸腹部・両大腿部に疼痛が生じたためメキシレチンを開始したが改善せず,同年9月激痛にて起居動作や歩行が困難となり入院.異痛症を伴った治療後有痛性神経障害(以下PPN)と診断.アスパルトは一時中止しアミトリプチリンとデキストロメトルファンを投与したところ著効.NPH1日1回より再開し緩徐にコントロールした.最近日本で体幹部PPNの報告が多いのは,速効または超速効型による急速な血糖是正や動脈硬化性疾患の増加が関与しているかもしれない.
  • 荒井 宏司, 田中 智洋, 丸浜 伸一郎, 森 潔, 藤倉 純二, 冨田 努, 葛谷 聡, 山田 豪, 藤井 寿人, 中津留 有子, 南部 ...
    2007 年 50 巻 9 号 p. 703-707
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は66歳女性.58歳時に小脳失調症と診断.64歳頃糖尿病と診断されSU剤を投与されていたが,半年前より血糖コントロールが悪化したため当科を紹介.BMI 15, HbA1c 10.4%, FBS 130 mg/dL, 75 gOGTT2hr値324 mg/dL. 著明なインスリン分泌低下を認めた.血清抗GAD抗体141,000 U/mLと著明高値,抗IA-2抗体(-), 髄液抗GAD抗体644 U/mL. 姿勢保持障害とdysmetria, 自発眼振,下肢痙性亢進を認め,MRI上小脳の萎縮を確認した.最近,小脳失調症の一部が抗GAD抗体高値を示し,その多くが糖尿病を合併することが報告されている.免疫グロブリン静注療法1週間後より神経学的症状・徴候が改善し,1カ月後抗GAD抗体価は68,500 U/mLまで低下した.インスリン分泌能に対する効果は現時点では明らかでない.免疫組織化学において患者血清はラット小脳皮質および膵島を認識した.糖尿病と小脳失調発症に共通の自己免疫機序の関与が示唆される興味深い症例である.
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