糖尿病
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原著
低脂肪,低エネルギーに調整した和食の予防医学的効果
—体脂肪率高値の若年女性における検討—
永井 成美坂根 直樹森谷 敏夫
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2008 年 51 巻 10 号 p. 889-898

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抄録

和食は通常,主食の米に汁物,主のおかず,副えのおかずを揃えた形態で摂取されるため栄養バランスを整えやすく,また西欧食に比べて低脂肪である点を利点とする.しかし,健康への影響を実験的に検証した研究は少ないため,本研究では,低脂肪,低エネルギーに調整した和食の摂取が,体脂肪,メタボリックシンドローム関連指標,エネルギー代謝,自律神経活動指標などに及ぼす影響を予防医学的見地から検討した.対象は,標準体重でありながら体脂肪率が高い若年女性11名(年齢;21.7±0.5歳,BMI; 21.0±0.5 kg/m2, 体脂肪率;29.8±0.7%)であり,1食400 kcal(PFC比;20:20:60)に整えた和食を研究室で調理し,1日3回2週間供与した.身体活動量は介入前の状態を維持した.介入前後に体重,体脂肪量,ウエスト周囲径,血圧,血液生化学検査,エネルギー代謝,インスリン抵抗性(HOMA-IR), 交感神経活動指標(心拍変動パワースペクトル解析による)を測定した.介入後には,体重(-2.3±0.2 kg), 体脂肪量(-1.7±0.2 kg), ウエスト周囲径(-3.7±0.6 cm)が有意に減少し,空腹時血糖,インスリン,グリコアルブミン,HOMA-IRも有意に低下した.また,脂質酸化量,および交感神経活動指標の有意な増加とともに(p<0.05), 血清中性脂肪が有意に減少していることから(p<0.01), 全身の脂質代謝の亢進が示された.結論として,低脂肪,低エネルギーに整えた和食の摂取は,2週間という短期間で比較的穏やかなエネルギー制限であっても,体脂肪率とウエスト周囲径減少,およびインスリン抵抗性改善と全身の脂質代謝亢進に寄与していた.本研究結果は,適切な食事介入が体脂肪率の高い若い女性の体組成改善のみでなく,将来のメタボリックシンドローム予防にも有効である可能性を示唆するものである.

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© 2008 一般社団法人 日本糖尿病学会
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