糖尿病
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症例報告
粗暴なインスリン注射により腹部巨大皮下血腫を生じた2型糖尿病の1例
吉田 俊秀原山 拓也楠 知里大瀬 裕之
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2008 年 51 巻 10 号 p. 929-932

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抄録

症例は2型糖尿病と肝硬変にて加療中の70歳女性.身長149.0 cm, 体重43.7 kg. 服の上から直接インスリン注射をする大リーガーを見て,自分もお腹を出して直接注射してみた.注射直後からその部に疼痛が出現し,めまいが起こり,3時間後には意識を消失した.救急病院へ運ばれ,検査の結果,著明な貧血のほか,腹部に広範な皮下出血と注射部直下に巨大皮下血腫(8×11×4.5 cm)が確認された.この大出血の原因には患者が痩せていたことに加え,合併する肝硬変による血小板数減少と,用いたインスリン注入器(ヒューマカート®キット)の注入抵抗の問題が考えられた.最近では,衣服の上から注射しても安全であるという報告が多く見られる.しかし,本例のように,痩せ型で肝硬変のような合併症を伴う場合には,インスリンデバイスの選択を含め,原点に帰った慎重なインスリン注射指導を行う必要があると考え報告した.

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© 2008 一般社団法人 日本糖尿病学会
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