抄録
症例は59歳,女性.高血糖,ケトーシスにて入院.抗グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体が55,400 U/mlと高値で,内因性インスリン分泌の低下を認め1型糖尿病と診断した.胸腺腫摘出術の既往があり,術後に口腔カンジダ症を繰り返していた.13歳時に肺結核にて治療の既往があるにも関わらず,ツベルクリン反応は弱陽性にとどまり細胞性免疫能の低下が示唆された.末梢血CD4+ T細胞の比率の低下があり,CD4+/CD8+の低下を認めた.CD4+ T細胞の低下を来す他の疾患を認めず,胸腺腫にともなったCD4+ T細胞の減少と考えられた.自己抗体は抗核抗体,抗アセチルコリン受容体(AChR)阻止型抗体,マイクロゾームテスト,サイロイドテストが陽性であったが,甲状腺機能を含め他の内分泌機能異常は認めなかった.末梢血CD4+CD25+ T細胞の減少を認め,レギュラトリーT細胞の数的減少が発症の誘引となっている可能性がある.