抄録
症例は64歳の女性.今までに糖尿病を指摘されたことはなかった.しかし,数年前より四肢の皮膚の乾燥と硬化があり,皮膚に亀裂が入りやすかった.平成18年1月より,左母趾に潰瘍が出現し改善がみられなかったため,近医の内科を受診した.この際,HbA1c 11.5%と高血糖を指摘され,当院へ紹介され入院した.入院時,皮膚は四肢末端の硬化と乾燥が著明で手指に拘縮を認めた.入院後は抗生剤の投与とインスリンによる血糖管理を行ったが,改善しないため,第20病日に左母趾切断術を施行した.四肢の乾燥と硬化は糖尿病性皮膚硬化症(diabetic digital sclerosis)と考えていたが,皮膚生検の結果と抗セントロメア抗体陽性より皮膚硬化症と診断した.内科医にとって日常診療において手指の観察も重要であり,diabetic digital sclerosisと皮膚硬化症の鑑別についての文献的考察も加え報告する.