2009 年 52 巻 1 号 p. 51-54
症例は56歳,女性.2000年に糖尿病網膜症発見を契機に2型糖尿病が判明し,インスリン導入.2004年糖尿病性壊疽のため,右4趾切断術後,インスリン自己中止.2007年6月右乳房の疼痛・腫脹,38°C台の発熱あり,右化膿性乳腺炎にて入院.入院時視力指数弁,下肢深部腱反射消失.血中CRP 21.3 mg/dl, 白血球(15,700/mm3)と高度の炎症を認め,随時血糖516 mg/dl, HbA1c 15.3%, 血中総ケトン体4,125 μmol/l(3-ヒドロキシ酪酸2,505 μmol/l),動脈血ガスではpH 7.445と糖尿病性ケトーシスを呈していた.直ちに,抗生剤投与および生理食塩水点滴静注,インスリン療法開始.急性化膿性乳腺炎に対して切開排膿,ドレナージ,デブリードメントを行い,炎症陰性化し,その後深い潰瘍形成残存あったが,トラフェルミン塗布開始後,創治癒良好となり,第36病日に退院した.急性化膿性乳腺炎は,産褥女性にしばしばみられる疾患であるが,2型糖尿病の非産褥女性での報告は検索し得なかった.本症例のように,視力障害を有する糖尿病患者では,非産褥女性であっても,急性化膿性乳腺炎の発症に注意を要すると思われ報告する.