抄録
症例は68歳,男性.1995年(55歳)に2型糖尿病と診断され,SU薬が投与された.2006年(66歳)より血糖コントロールが不良となり,アスパルト混合製剤にてインスリン導入し血糖コントロールは改善したが,4ヶ月後より再び血糖コントロールが悪化した.インスリン抗体価が高値であり,アスパルト混合製剤の中止,経口血糖降下薬のみの治療に変更したが改善しなかった.リスプロの投与,ステロイドの投与を行ったが,血糖コントロールは不良であった.経過中,血中遊離インスリン値は常に低値または感度以下であった.デテミルを投与した翌月より血糖コントロールが改善し,インスリン抗体価が高い状態でも,遊離インスリン値は80-200 μU/mlと明らかに増加した.デテミルと他のアナログであるアスパルトとリスプロとの構造の差異は,デテミルにおいてインスリンB鎖の30位が欠失し29位に脂肪酸が付加されている点である.この差異が遊離インスリン値の上昇と血糖コントロールの改善に関与した可能性がある.